25%
現在日本で、必ずしも入院が必要ではなく、在宅で治療が可能であるにも関わらず、長期入院している方の割合です(厚生労働省調べ)。このような入院を、社会的入院といいます。
社会的入院をしている人は、精神障害者、要介護高齢者等が多いです。もともとは、結核の治療を終えたが、貧困で家がなく帰宅できない人に対して社会的入院という言葉が使われていました。
社会的入院の原因
では、なぜ社会的入院が起こってしまうのでしょうか? 実は、海外では社会的入院はほとんどないと言われています。
医療保護入院制度
精神科では、医療保護入院制度によって、本人の同意がなくても、指定医と家族等の同意で入院させることが可能です。家族等には、「配偶者」・「親権を行うもの」・「扶養義務者および後見人または保佐人」が含まれます。
日本ほど精神障害者を長期入院させている国はありません。ちなみにイタリアでは、単科精神科病院が廃止されたそうです。
ケアの担い手・介護サービスの供給不足
家族による介護が難しく、退院できない方がいます。介護施設を利用したくても空きがなかったり、費用負担が大きいという問題があります。医療保険サービスによって負担が軽くなるため、介護の代替として入院を続けるそうです。つまり、日本の社会保障制度の構造・居場所不足が、社会的入院を生み出していると言えるのではないでしょうか。介護施設だけでなく、リハビリ施設も不足しているそうです。
虐待
治療は終わったが、虐待が疑われるため家に帰ることができない子どもがいます。虐待があるかどうか第三者にはわかりづらく、判断に時間がかかるそうです。また、児童養護施設、乳児院、一時保護所等の空きがないため、退院できない子どもがいます。中には、3年間入院を続けた子どももいるのだとか。子どもを守るため、治療の必要がない場合「やむを得ず何らかの病名をつけ」、入院をしてもらうことがあるそうです(NHK HPより引用)。
社会的入院の何が問題なのか
・長期間入院による筋力の衰え、認知機能の低下
・社会性、生活能力の低下→社会復帰できない
・学校に行けない
・病床不足を招く
・薬等、過剰医療を招く恐れがある
何より、本人の意思による生活ができていません。本人の意思が尊重されていません。
参考文献
・水口由美. (2008). 社会的入院に関する総合的レビューとその要因モデルの構築. Keio SFC J, 8, 161-76
https://gakkai.sfc.keio.ac.jp/journal/.assets/SFCJ8-2-12.pdf
・前田兼徳.(2012).社会的入院を必要とする要介護認定透析患者の医療連携ー第56回日本透析医学会シンポジウムよりー.透析会誌45(3), 219-222
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/45/3/45_3_219/_pdf
・塚原康博. (2003). 社会的入院と高齢者医療・ 福祉政策
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/5675/1/shakaikagakukiyo_41_2_285.pdf
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