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インタビュー

大学での合理的配慮って?【上智大学障がい学生支援担当インタビュー】

上智大学をはじめ、大学には障害のある学生が多く通っています。障害のある学生が他の人と同じように学ぶためには、いろいろな点で支援や配慮が必要になります。上智大学には、そうした障害のある学生に対して支援や配慮の提供をしたり大学や教員との間で調整を行う部署があります。いったいどのような業務をされているのでしょうか。

今回は、上智大学ウェルネスセンター障がい学生支援担当の職員の方にインタビューをさせていただきました!


本日はよろしくお願いします。まずは、障がい学生支援部門での主な業務についてお伺いできればと思います。

基軸となるのは上智の学生さんの相談への対応です。相談を受け付けたら、一人一人面談をして、各自の障害の状況や困りごとを聞き取り、どのような支援や配慮をしていけばよいのかを一緒に考えていきます。

「相談の対応」と一言で言っても、いろんな障害の学生さんがいるので、どのようにアプローチしていくか(どのような内容を聞き取るか、どのような聞き方をすればスムーズか等)はとても重要なことであり、時間をかけて準備をしてから面談に臨んでいます。

相談や受付と一言で言っても、相談を受けるまでにどうやってアプローチしていくかも学生さんによって異なりますし、いろんな障害の方がいるので、一人一人に応じてアプローチの仕方も変えながら、時間をかけて準備をしています。

面談をする中で、実際に合理的配慮の申請をしたいという希望があれば、手続きの案内をして、必要書類を学生さんに提出してもらいます。その後は、書類の内容を確認し、学内手続きのステップに進めます。実際に、大学としてどのような配慮を提供できるか関係部署とも相談・検討し、必要に応じて学生さんと調整していきます。

合理的配慮

障害のある人が、障害のない人と同様の人権を享受できるよう、教育、雇用、およびその他の社会的な活動に平等に参加できるように、個々の障害や困難に応じて行われる変更や調整のこと。

上智大学における学生への合理的配慮としては以下のように定義されている。

「本学の障がい学生支援においては、授業や実験、実習等において、障がいのある学生がその障がいにより修学上必要な環境や情報を得ることができない場合に、それらを保障する目的で大学が行う変更や調整、および評価に際して本人の学習の程度を適切に判断するために行う変更や調整を意味します。」

上智大学 ウェルネスセンター障がい学生支援 学生用リーフレット

近年は海外からの交換留学生等の配慮希望者も増えています。
海外では、障害学生支援関連の専門スタッフを多数揃えた部署を整備している大学が多く、そのような大学では多種多様な支援を提供しています。そこから派遣されてくる留学生の困りごとに対して、本学がどのような形で対応できるかを学生ごとにアレンジ(調整)していきます。

合理的配慮の調整の場面では、「『教育の本質』を変更しない」という原則があります。本学の「教育の本質」を担保していく上で、ご本人の希望通りの配慮を提供することが難しい場合もあるので、そういう時には、できない理由を説明して納得いただいたり、代わりにできる支援を提案したりして、お互いに歩み寄りながら、合理的配慮の調整を進めています。

学生さん以外にも、教職員や保証人、受験生などからの質問や相談に対応したり、他大学など学外機関から問い合わせや訪問を受けたりすることもあります。学内外の様々な調査やアンケートの回答を作成するというような事務的な業務も多いです。

学生が受けられる合理的配慮にはどのようなものがありますか。

提供している主な支援・配慮は大学のホームページでも公開しています。

上智大学ホームページより(https://www.sophia.ac.jp/jpn/campuslife/soudan/specialneeds/)

合理的配慮の内容は、学生さんの個々の障害の状況や必要度に応じて調整をしているので、「上智大学では○○障害の人には~~の配慮をしています」と固定的なイメージを持たれないように、あえてあまり具体的な事例を載せず、ご相談ベースで考えていきましょうというスタンスでいます。

障がい学生支援のホームページを見ると、支援を通して「援助要請力」、「自己理解力」、「工夫する力」の3つを大切にしていると書かれていますが、どうしてこの3つの力が大切なのでしょうか。

私たちは、障害のある学生さんが上智大学の卒業生として社会に出ていく時に、ご自身の納得できる道を進んでいただけるといいなと思っています。

上智の学生さんをはじめ、社会には、気持ちとして誰かの役に立ちたいと思っている人はいるけれど、誰もが初めから、障害という自分と違う境遇のある方に対して、どういう困りごとがあるのか、その人が心の中でどういう風に思っているのかということに気づくのは難しいことではないかと思ってます。

ですから具体的な援助要請、こういうことを支援してくださいとか、ここで困ってますというようなことを障害のある人から言われないと、自分は何をしたらいいのか、あるいはしない方がいいのかというところがわからなくて、遠慮してしまうようなことがあると思うんです。反対に、相手(障害のある人)にとって本当は必要ないことなのに、良かれと思ってしてしまう過剰な支援が発生するかもしれないとも思っています。だからこそ、そうしたミスコミュニケーションをなくしていくために「3つの力」が大事になると考えています。

決してこの「3つの力」だけが大事というわけではありませんが、障害のある学生さんご本人が、自分にとってどんなことが難しくて、どういう工夫があると困難さが解消されるのかといったことや、あるいは自分でここまでできるからこの配慮はいらない、といったところを言語化して、自分から伝えていくことは、社会に出てからも必要になってくると思います。大学生活はそういうスキルをつける練習の機会だと意識して過ごしてほしいと思っています。

いろいろな学生さんがいるので、元々そうしたコミュニケーションが出来ている人もいますし、反対に最近自分の障害を知ったばかりで、自分自身が障害を受けとめきれていない学生さんもいたりするので、「この学生さんにはどのようなことを伝え、どのようなことに目を向けてもらうのがよいか」を考えながら、対応しています。これから先も障害(特性)とうまく付き合いながら生きていくためには、ご自身としてまずどういう支援や配慮が必要かを整理して考えていけるようにサポートしていきたいと考えています。

合理的配慮の観点から、大学で課題に感じていることやこれから取り組んでいきたいことを教えてください。

実際に授業や部署の窓口で、学生さんに対して合理的配慮を提供していく担い手になるのは、その現場にいる教員・職員なので、学内において、障害のことや合理的配慮に関する理解の向上がもっと必要だと感じています。

目に見えない障害、例えば精神障害や発達障害、内部障害のような障害のある学生さんや留学生からのご相談も増えていますので、教職員がより一層、学生さんのニーズに寄り添った対応ができるよう、理解を深められればと思います。

これから取り組んでいきたいこととしては、学内全体の理解向上という点で、合理的配慮や障がい学生支援に関する教職員向けの手引きの発行や、FD(ファカルティ・ディベロップメント)の取組みとして障がい学生支援関連のプログラムを研修に取り入れてもらうことにより学内の啓蒙を図っていく、というようなことを考えています。

ファカルティ・ディベロップメント
教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。その意味するところは極めて広範にわたるが、具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などを挙げることができる。

文部科学省「大学教員のファカルティディベロップメントについて」

上智大学に関わる方や上智大学生に伝えたいメッセージがありましたらお願いします。

当事者の学生さんに関しては、「3つの力」を伸ばしていってほしいということが思いとしては強いので、届けたいメッセージはそれに含まれると思います。

全ての上智大生に向けては、(当事者として)障害とともに生きることや、障害がある人と関わることは、決して特別なことでも他人事でもないので、障害がある方・あるかもしれない方が身近にいらしたら、自分とは異なる資質であるとか課題であるとか、そういうものをお持ちの方であるということを理解して、お互いを尊重し合いながら、共に豊かなキャンパスライフを送っていっていただけるといいなと願っています。

障害のある人も、周りの人から見たら不自由そうに思われるかもしれないですが、実際は自分で方法を工夫したり、時間をかけたりすれば、自分の力でできることってたくさんあると思います。初めから「これはできないんじゃないか」と先入観を持って、「支援してあげなければ」という形は違うのではないかと思っています。相手の目線がどこにあるか、相手がどのような立場に置かれているかを理解することに目を向けてほしいなと思います。

障害のある学生もそうでない学生も、ぜひ寄り添って、良き仲間として一緒にキャンパスライフを送ってもらえることを願っています。


この記事を書いている私も、障がい学生支援の職員の方にお世話になっていますが、どのような理念の上でそうした業務をされているのか知ることができました。

今回はありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

障がい学生支援の手続きや配慮についてはこちらから

学生向けリーフレット
https://piloti.sophia.ac.jp/assets/uploads/2023/08/07145015/shougaigakusei_leaflet202307.pdf

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