〜「死」を前向きに考えてみるきっかけ〜
「死」や「人生の終わり方」って、なんだか重くて話しづらいテーマ。でも、それって本当にそうでしょうか?
2025年春に公開されるドキュメンタリー映画『ハッピー☆エンド』は、「在宅緩和ケア」というテーマを通して、“死をどう迎えるか”という問いを、やさしく、そして明るく投げかけてくれます。

映画『ハッピー☆エンド』
在宅緩和ケアという選択をした5つの家族の姿を丁寧に追ったドキュメンタリー映画。過酷ながん治療ではなく、住み慣れた自宅で、痛みを和らげながら自分らしい時間を大切にする――そんな「在宅緩和ケア」という生き方を、医師・萬田緑平さんとともに描いています。
作中では、全身がんを抱えながらも女優としての道を歩み続けた樹木希林さんの言葉も紹介され、人生の最期をどう迎えるのか、そっと心に問いかけてくれる作品です。詳細な映画情報はページ下部へ
この記事では、映画を観た福祉系の学生(と元学生)2人が、率直に語り合った内容をお届けします。

かず
社会福祉を学ぶ大学生

ぺぇたぁ
社会人1年目/元・社会福祉を学んだ学生
鑑賞後対談

この映画、めっちゃよかった……。何も予備知識がなくても心が動かされて、普通に泣きそうになった。

うん、観てる側も「一緒に患者さんの最期を見守ってる」って感じがしたよね。ドキュメンタリーとしてすごく良かった。

患者さんの姿がすごく自然だったよね。カメラが入ってることを忘れちゃうくらい自然体で、その人らしさが出てた。

うんうん。単なる終活ドキュメンタリーって感じじゃなくて、「どう生きるか」がちゃんと描かれてた気がする。緩和ケアって聞くと、「もう治らないから仕方なく選ぶもの」ってイメージが強かったけど、全然違った。

抗がん剤治療とか他の選択肢もある中で、在宅を自分で選ぶ人が出てきて、これって「自分の意思で選ぶ生き方」なんだなって思った。

治療法の一つっていうか、人生の選択肢の一つって感じ。諦めじゃなくて、ちゃんと「意味のある決断」なんだなって。

「家」が薬になる?

映画で「家が一番の薬」って言ってたシーン、すごく印象に残ってる。

退院直後と、自宅で過ごすようになってしばらくした映像で、患者さんの表情が全然違うんだよね。みんなすごく明るい笑顔で。

住み慣れた家で、家族に囲まれて過ごすって、ほんとにそれだけで「効く」んだなって思った。

心が元気だと、生きようって気持ちも出てくるもんね。病院って、体は良くなるかもしれないけど、心は疲れちゃうこともある。

医療って、身体だけじゃなくて、心とのバランスが大事なんだなって思った。

緩和ケアって“最終手段”じゃない

私もこれまで、緩和ケア=本当に最後の手段ってイメージだったけど、この映画を観て考え変わった。

緩和ケアっていうと「痛みを和らげる」ってイメージが強かったけど、この映画では「家で過ごすことでその人らしさを取り戻す」みたいな姿が印象的だったよね。

「家に帰れる」ってだけで、気持ちが全然違うと思う。もう病院からは出られないって思ったら、希望もなくなるし。

たとえば旅行に行くとか、好きなお酒を楽しむとか、そういうことって、病院じゃ難しいもんね。

映画の中では、医療用麻薬を患者さんが使用する場面があったよね。麻薬って聞くとなんだか怖いイメージを持っていたけれど、痛みを少しでも和らげて楽しめる時間を作ることも「その人らしい生き方」に繋がっているんだなって感じた。

「どう死にたい?」じゃなくて「どうハッピー☆エンドを迎える?」

この映画のタイトル、めちゃくちゃいいよね。『ハッピー☆エンド』。

ほんとに!「どう死にたいですか?」って聞かれるとドキッとするけど、「どうなったらハッピーエンドですか?」なら考えやすい。

自分の人生を「物語」として捉えて、「自分にとっての幸せな終わり方」を想像するって、すごく前向きな視点だと思う。

「死=終わり」じゃなくて、「どう人生を締めくくるか」っていう考え方になるの、めっちゃいい。

自分だけじゃなくて、周りもハッピーに

萬田先生が、延命治療をやめるっていう決断は、ちゃんと考えたうえで家族にも伝えることが大事って話してたのが印象的だったよね。自分一人の気持ちだけじゃなくて、周囲と一緒に考えていくことがすごく大切なんだなって思った。在宅緩和って、本人だけで完結することじゃなくて、家族や医療者と一緒に選び取るものなんだなって。

うん。本人の意思があっても、それだけで完結するものじゃないよね。家族がちゃんと理解して、納得して初めて、その人らしい「ハッピーエンド」になるんだと思う。

そうそう。周囲と話し合うことって、実は「最期をどう迎えたいか」をかたちにしていくプロセスなんだよね。ちゃんと伝え合わないと、たとえ本人に強い思いがあっても、周りは不安だったり迷ったりすると思うし。

健康とは何か?

映画に出てきた人たち、お酒を飲んだり、旅行したり、がん患者とは思えないくらい楽しそうだったよね。

病院なら絶対NGなことも、在宅ならできる。その違いが「心の健康」にもつながってるんだろうな。

WHOの健康の定義でも「身体だけじゃなく、心も社会的にも満たされてる状態」ってあるけど、それを体現してたよね。

ほんとに。「身体が健康=健康」じゃないんだなって気づかされた。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」WHO憲章(日本WHO協会訳)

最後に:死は“向かうもの”かもしれない

「死が来る」んじゃなくて、「ハッピーエンドに向かって生きる」っていう捉え方。これ、ほんと大きな気づきだった。

死を「待つ」んじゃなくて、死に「向かって準備していく」それってすごく前向きで、希望が持てるよね。

うん。この映画は、「死」について考えることが「生き方」を見つめ直すことにつながるって教えてくれたと思う。
『ハッピー☆エンド』は、「死に方」ではなく「どう生ききるか」を考えるきっかけをくれる映画です。
在宅緩和ケアという選択肢を知ることは、誰にとっても未来の自分や大切な人のために、きっと意味のある一歩になるはず。自分らしく、心から満足できるハッピーエンドをどう描くか——。
この映画は、そのヒントをたくさん与えてくれました。
🎬 映画『ハッピー☆エンド』
出演:萬田 緑平(在宅緩和ケア医)、樹木 希林
ナレーション:佐藤 浩市、室井 滋
監督:オオタヴィン
主題歌:ウルフルズ「笑えればV」
公開日:2025年4月18日(金)より、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
公式サイト:https://www.happyend.movie
🄫まほろばスタジオ
コメント