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インタビュー

「かまってほしかった」~早期に大人になる事を迫られる子どもの存在~

「きょうだい児」と聞いて、皆さんはどのような想像をするでしょうか。

そもそも、「きょうだい児」という言葉をこの記事で初めて目にする方もいらっしゃるかもしれません。

今回はそんな「きょうだい児」について調べ、さらに1人の当事者の方にインタビューさせていただく事が出来たので、まとめてみました。

(注)本記事では、成人済みの「きょうだい」の方々も未成年の「きょうだい児」と統一して使用しています。

それでは、どうぞ!

「きょうだい児」とは

きょうだい児とは、病気や障害を抱える兄弟姉妹のいる子どもの事を指す言葉です。

障害を抱えるきょうだいがいる子どもは、成長する中で様々な影響を受ける事になります。

それは幼少期から老年期に至るまで長い期間影響を与える事になる場合も少なくありません。

では、どのような影響があるのか見ていきましょう。

きょうだい児が抱える問題

注目されにくい

近年、ニュースなどで「きょうだい児」に関する問題が取り上げられるようになりましたが、まだまだ認知度は低いのではないでしょうか。

筆者が感じている事ですが、例えば福祉的な支援をしようという話になっても、障害者への支援という言葉はよく見聞きしますが、きょうだい児への支援はあまり無いように感じます。

障害児や障害者への支援という大きな話題によって、そのきょうだい児への支援の必要性というものが隠れてしまっているのが現状といえます。

また、きょうだい児は両親に迷惑をかけないように「良い子」や「目立たない子」になるように努力したりする場合もあるため、さらに問題が見えにくくなってしまいます。

孤独感

障害を抱える子どもが生まれると、大抵の場合、家族がその子どもにかかりっきりになるという問題があります。

構ってもらえない寂しさの結果「きょうだい」は孤独を感じるようになってしまいます。

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BIBI

寂しいと思っていても、両親の大変さを間近で見てるから「さびしい」とも言えないんだね……

それぞれの考え

きょうだい児といっても様々で、身内に障害を抱える兄弟姉妹がいるという事に対しても様々な考え方があるようです。

例えば、障害を理由に兄弟姉妹が心ない事を言われた場合では、まず最初に悲しみを感じる人もいれば、怒りを感じる人もいます。また、怒りを感じつつも相手に対して強く言い返せなかった事によって罪悪感を感じてしまったり、その場で言い返さなかった、もしくは、言い返せなかった事を親から責められたり、自分で自分を責めたりするなどの苦悩があるという事が分かりました。

他にも、調査では自分の家族と思われたくないと思うような人もいるようでした。これに関しては、調べる中で特に家族よりも友人などとの繋がりの方が強くなる時期によくみられました。

ある調査では「小学生の頃、障害のある兄弟姉妹について友だちに話したか」という質問に対して、45%が「話した」、50%が「話さなかった」と回答していました。

進路や就職への影響

障害を抱える兄弟姉妹がいるきょうだい児の特徴として、進路選択の1つに福祉や医療関係が入ってくるといった影響がある事が挙げられます。

兄弟姉妹のために自らそういった分野に進む事や家族・親族から求められたためにそういった分野に進むといった事もあるようです。

筆者も幼い頃から障害を抱える人たちと交流した経験が今福祉を学んでいる理由の1つでもあるので、進路選択に影響が出るという事には納得できます。

他には、「経済的理由や面倒を見るために何らかの制約を受けた」という回答もありました。

これについては、親から直接言われる場合もあると思いますが、例えばとても遠い所に進学して家を出なければならなかったとして、きょうだい自身が障害を抱える兄弟姉妹の事を放っておけないと考え、踏み留まるという場合もあるのではないでしょうか。

AC(アダルト・チルドレン)

アダルト・チルドレンとは、機能不全となっている家庭で育ち、子どもが子どもらしく育つ事が出来ないまま大人になった人の事を指します。彼らは、

  • 「親の期待に沿えるように努力し続ける事や家族の問題を1人で背負う」
  • 「目立たないように生活する」
  • 「カウンセラー的な立ち回りで慰め役に徹する」
  • 「問題が起きそうになった時に自らの言動・行動によって場を治めようとする」
  • 「自分の事を後回しにして他人の世話を優先する」

などの役割を家庭内で担わされている事があります。

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BIBI

これらのパターンに当てはまらない場合もあるし、もっと詳細に分けるべき事例もあるから注意が必要だよ!

調べていく中で、こうした子ども時代の影響から、大人になって生きる上で様々な問題を抱えてしまうという事例が多く見つかりました。

問題が大きくなり、顕在化して初めて支援に繋がるという事が多い現在、アウトリーチの重要性が高まっているのではないでしょうか。

(注)アウトリーチ:支援者側が積極的に非支援者のもとへ出向く事。自ら支援を受けようとしない人や受けられない人を支援者側が見つけ出すことで支援に繋げることが出来るというメリットがある。

インタビュー:きょうだい児のAさん

実際に障害を抱える姉妹のいる50代の女性Aさんにお話を伺いました。

Aさんには、生まれつき全盲で知的障害を抱える妹のBさんがいます。
そして、Aさんが物心つく頃には、既に家庭はBさん中心に動いていたそうです。両親にはあまり構ってもらえなかったため、早い時期に「大人」になった自覚があると語っていました。

人との関わりの中で

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太郎

事前に調べる中で、友人との関係で悩む事があるきょうだいの方々もいらっしゃるというお話でしたが、Aさんは学生時代にそのような経験はありましたか?

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Aさん

小学校や中学校では友達を家に連れてくる事に対して抵抗感はありましたね……。友達と兄弟姉妹の話になった時も聞き役に徹して、自分から妹の話をあまりしなかったと思います。大人になるにつれて、あまり気にならなくなり、自然と言ったりできるようになったんですけどね。別に恥ずかしいという訳ではなかったです。けど、なんとなく知られたくないって思っていました。

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Aさん

でも、今でも偏見などを持ってそうな人には障害を持つ妹がいると言うのに抵抗感がありますね……。

「いい子」にしてた

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Aさん

当時を振り返ると、なるべく両親を困らせないようにしないといけないと思って、わがままをあまり言わなかったように思います。

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Aさん

今になると、別に言ってもよかったのに何故言わなかったんだろうと不思議に思います。私が両親に遠慮していたつもりはありませんが、無意識に妹の世話で大変な両親に対して、わがままを言ってはいけないと考えていたのかもしれません。

私が子どもの頃はわがままばかり言っていた記憶があるので、わがままを言わなかったというのは驚きました。

一人っ子のような感覚

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Aさん

友人との会話や学校など大きい集団の中に入ったことで、周囲とは違うなという思いがありました。

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太郎

それは、同じく兄弟姉妹がいる人と比べてという事ですか?

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Aさん

そうですね……。妹と会話する時は障害があるので、実際の年齢と話せる会話内容の差があって、複雑な会話みたいなものはできないし、2人でいる時以外は母が妹にかかりっきりなので、姉妹なんだけど少し違う感覚……一人っ子のような感覚がありました。

私は一人っ子なので、寂しさに共感する事が出来ました。私の場合、兄弟がいない分、欲しいものを買ってもらいやすかったり、好きな食べ物を独り占めできたりといったメリットもありましたが、Aさんの場合はどのような感じになるのでしょうか…。

大人になって初めて言えた想い

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Aさん

手のかからない子どもであり続けた私ですが、ある時、子ども時代に抱えていた想いを一気に吐き出した事があったんです。

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太郎

そんな出来事が……。
逆に、今まで一切自分の心の内を明かさなかったという事ですよね。私はそこに驚きました。

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Aさん

30歳くらいの時、家族で昔の話をしてるうちに子供時代にしてほしかった事をバーーッとほぼ全部言って泣き叫んだという事がありました。

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Aさん

少しの時間だけでも良いから向き合ってじっくりと話を聞いてほしかった」とか「一人で抱え込まないで、私にも妹の世話をさせてほしかった」などの事を伝えましたね。

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太郎

大人になってからやっと伝えられたんですね。ご両親の反応はどのようなものでしたか?

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Aさん

私がこのような想いを抱えているとは思いもしなかったようで、すごく驚いてました。その日以降、前よりは私の事を気にかけてくれるようになったと感じています。

今でも消えない想い

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Aさん

これまでの事を振り返って、今でもずっと思っている事があるんです。

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太郎

ご両親にAさんの気持ちを伝えた後でも、消えない想いがあるんですね。

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Aさん

はい。それは、「いつまでたっても自分の事を見てほしい」という願いです。

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Aさん

昔から妹には明らかに愛しているという態度で接してるのに、健常者の私にはあまりあからさまな態度ではないんです。

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太郎

Aさんに対してもBさんと同じように、もっと分かりやすく自分の事を愛しているという事を表現してほしいという事ですよね。

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Aさん

その通りです。
当時も今も愛してもらっていないとは思いません。けど、ふと寂しくなることがあるんです……。

妹のおかげ

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太郎

ここまで、ネガティブな話を中心に質問させていただきましたが、今度はポジティブな話をお聞きしたいです。

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Aさん

はい。それはもう沢山あります!

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Aさん

妹はとても落ち着いた性格で、一緒の空間にいると癒されます。障害によって精神年齢は低くても、裏表のない純粋な思いやりがあります。妹は周りから沢山の愛をもらった分、今こうして穏やかなのかなと思っています。

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Aさん

私は世の中の障害者と呼ばれる人たちに対してあまり偏見などは無いのかなと思います。また、視覚障害者に対しての声掛けの仕方などについては他の人よりは慣れていると思います。それは間違いなく、妹がいてくれたおかげです。

まとめ

近年、徐々に顕在化してきた家庭が抱える問題。

その1つが「きょうだい児」の抱える問題であり、その支援が求められています。

これまで、障害児や障害者への支援といった事については様々な研究や実践が行われてきました。しかし、障害児や障害者という大きな話題性のある問題に隠れ、「きょうだい児」が抱える苦悩や負担というのは中々注目されてきませんでした。

「きょうだい児」の苦悩や負担は上で記述した通り、「甘えたくても甘える事が出来ない」といった事や「兄弟姉妹間での優先順位がいつも後になる」「障害を抱える兄弟姉妹の世話や介助をしなければならない」という事に加え、「親が障害を持つ兄弟姉妹の世話をしている間、親に変わって家事をしなければならない」などの事が挙げられます。

特に後半は「ヤングケアラ―」とも絡んでくる問題であり、そのような側面からも注目を集めています。

中々顕在化しにくい「きょうだい児」の問題とその解決に向けて、我々に何ができるのか、今一度考えてみるべきなのではないでしょうか。

今回、この記事を読んでくださった皆さんが「きょうだい児」とそれに関連する諸問題に関心を持ち、考える機会となったならば幸いです。

本記事を執筆する上で参考にしたサイト

参考文献

  • 財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金『平成18年度障がい者の家族支援を目指すための調査研究:特に支援体制が遅れているきょうだいへの支援を視野に入れて』(平成19年3月)
  • 財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金『障害のある人のきょうだいへの調査報告書:障害のある人のきょうだいへの調査報告書:障害者の家族支援を目指すための調査研究:特に支援体制が遅れているきょうだいへの支援を視野に入れて』(平成20年6月)
  • 記事を書いた仲間
  • 新着記事
太郎

普段福祉に関わりがない人が注目しにくい話題を選び、私の記事で少しでも福祉について知ってもらう事を目指しています。

  1. 【今更ですが、「wel-bee Vol.3」振り返り】 前半

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