中尾将吾さん
今回は、福祉ネイリスト®、福祉ネイリスト講師として活躍されている中尾将吾さんにインタビューさせていただきました!
*本記事における写真は全て中尾様からご提供いただいたものです。
🗝日本保健福祉ネイリスト協会 副理事長
🗝訪問ネイルケアサービス ファミーユ 代表
🗝福祉ネイリストスクール広島校famille講師
🗝NS.Life Assistant 代表
福祉ネイリスト®とは
地域の高齢者施設や障がい者福祉関連施設、病院、またはなんらかの事情でネイルサロンにご来店頂けない方々のもとへお仕事として出張し、ネイルの力で“癒し・元気・希望”を感じてもらい、たくさんの笑顔をお届けすることを目的としたネイリストのことを言います。
一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会HPより引用
ジェルネイルを使わない
福祉ネイリスト®と、通常のネイリストの違いを教えてください
中尾さん:爪に色を塗っておしゃれを楽しんでいただくっていう大前提は一緒です。違うところで言うと、僕たちは基本的な対象が、高齢者の方とか障害者の方です。お子さん向けに活動されている方もいらっしゃるんですけど 、サロンにお越しいただくことが難しい方向けに僕たちが訪問するスタイルになっています。
あと、大きな違いで言うと、最近のネイルはジェルネイルが主流になっていると思いますが、僕たちはポリッシュ(いわゆるマニキュア)を使うことにしています。それは理由があってですね、どうしてもジェルネイルって爪への負担が大きかったりするんです。あと、オフするときにどうしても技術が必要だからです。例えば、高齢者の方が体調が悪くなり、救急搬送されたとします。病院では、酸素飽和度を測る機械を指先につけるんです。そのときにポリッシュやジェルネイルがついていると、正確な数値が取れないんです。そういった状況を考えて、病院に除光液はだいたい置かれています。しかし、ジェルネイルの場合は除光液でパッと取れるようなものじゃなくてですね、技術も必要になってくるので、緊急を要する場合にはすぐに対応ができないんです。もしどうしても測る場合は、近隣のネイリストさんを呼ぶことになるんですけど、それは現実的には難しいでしょう。だから、僕たちはジェルネイルを使わずに、普通のポリッシュを使って施術をしていることが大きな違いかなと思います。
あともう1つ、おしゃれを楽しんでいただくっていうところは共通しているんですけど 、 僕たちはプラスアルファで会話の部分 、言葉のキャッチボールであったりとか 、肌の触れ合いっていうところにも重きを置いてます。
認知症になる方を減らしたい
なぜ福祉ネイルに挑戦しようと思われたのですか
中尾さん:そもそも、認知症になる方を減らしたいという思いで始めました。前置きとして、うちのじいちゃんが10年以上前に亡くなったんです。寝たきりになって、認知症になって、母親が介護をする状態が2、3年続きました。介護する側の疲弊がすごくあると感じたので、じいちゃんが亡くなったときに、ちょっと安堵する部分があって。これでやっと母親が自由になるという思いがあったんですね。
そこから5、6年後くらいかな、福祉ネイルを知って色々調べてみたら、認知症の症状を抑えたりとか、そういう効果があると書かれていたんですね。それで、面白いと思って。爪に色を塗ったから認知症が改善されるのではなく、色を塗ったことを通して、「いろんな方に見てもらいたいから、外に出よう」というきっかけづくりの部分だと思います。
福祉ネイルが広がったら、認知症になる人が減ると思ったんです。僕はゼロにできないにしても、発症を遅らせることができるのではと思いました。
言葉のキャッチボールを大切に
施術をする際に、意識されていることや大切にされていることはありますか
中尾さん: 極端に言うと、色を塗る技術ってそんなになくてもいいと僕は思っていて。どういうことかって言うと、色を塗る技術が60点でも、会話を盛り上げる技術が120点だったら、僕はそっちの方が正解だと思っているんですね。最初にもお伝えしたように、色を塗ることと、言葉のキャッチボール、肌の触れ合いっていう、この3つに重きを置いています。爪がきれいになったなって思うことと同じくらい、「今日はたくさん話して楽しかったな」っていう思いを持ってもらえるのが、僕は福祉ネイリスト®としての100点の部分だと思っているんです。笑顔だったり、会話を楽しんでいただけるように常に気をつけながら。やっぱりリラックスして施術を受けてもらいたいですからね。
福祉ネイリスト®になるには
福祉ネイリスト®になる方法を教えてください
中尾さん:福祉ネイルを実施されている団体のHPなどから申し込みをする形になります。基本的な検索方法は2つあって。1つ目は、協会のHPから入っていただいて、認定校の一覧ページから探してもらって連絡するという方法です。2つ目は、SNSからですね。この先生に習いたいなっていう方がもし見つかるんであれば、受け入れ方法は先生によってまちまちですが、直接連絡をしてもらって問題ないかと思います。
認知度を高めたい
中尾さんは、福祉ネイリスト®に関する発信を行っていらっしゃいますが、何か課題を感じることはありますか
中尾さん:やっぱり、認知度の低さですね。今、全国で活動しているのが約2200人。上手に発信できている方は少なくて、営業に行けて、施設を訪問されている方はほんの一握りしかいない。やっぱりまだまだ知られていないっていうことは僕たちの一番の課題だと思ってます。
あとはですね、過去にネイルをしたことがないおばあちゃんって結構最初皆さん嫌がるんです。興味はあるんですけど、皆さん、自分の手とか指とか爪のコンプレックスって大体あるんです。爪の形が大きい、色が黒い、指がごつごつしているとか。だから、指を見せたくないとか、あといい年してみたいなことを言われたりします。最初に施術をさせてもらうときが一番ハードルとしては高いですね。2回目以降はとても喜んで来てくれるんですけど、80歳とか90歳とかになってチャレンジするってなかなか皆さん勇気がいるんですよ。
ダイレクトにお客さんの反応を見られる素晴らしい仕事
最後に一言お願いします
中尾さん:福祉ネイリスト®は、ダイレクトにお客さんの反応を見られる素晴らしい仕事だと思っています。福祉ネイルを知っていただいて、高齢者に関わることの楽しさに興味を持っていただけたらいいと思いますし、そこから福祉の世界に足を踏み入れるきっかけになってくれたら僕はすごく嬉しいなと思います。あとはですね、せっかくなので福祉ネイルの資格を取っていただいて、みなさんで福祉ネイルを盛り上げていっていただけると、なお嬉しいと思います。
最後に
ネイルは、主に女性がオシャレのためにするというイメージがありました。しかし、福祉ネイルでは、ネイルに抵抗のある方でも、ハンドマッサージのみでも受けることができ、男性でも利用しやすい工夫がされているように感じました。ネイルや会話を楽しみ、リラックスしていただくことを目的として活動されているというお話が特に心に残りました。
貴重なお話をありがとうございました!
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