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体験レポート

《前編》アートを通して人と人が出会う、混ざる、関係を超えて共創する。【パフォーマンスキッズ・トーキョー】

パフォーマンスキッズ・トーキョー(以下、PKT)は、ダンスや演劇、音楽などのプロの現代アーティストと子どもたちとがワークショップを通じてオリジナルの作品をつくり上げ、発表まで行う取り組みです。
2008年度に始まった事業で、現在は公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京と、NPO法人芸術家と子どもたちが主催しています。

ワークショップを通してアートに触れることで、子どもたちにどのような影響があるのでしょうか。

今回、都内中学校特別支援学級で行われたPKTのワークショップを見学させていただきながら、参加された生徒さんや先生、アーティストの田村一行さん(大駱駝艦メンバー)、PKTの運営を行う《芸術家と子どもたち》でコーディネートをしている中西麻友さんにお話を伺いました。

本記事は前編と後編の2本立てでお届けします!
前編は、ワークショップの様子と参加された生徒さんや先生、アーティストの田村一行さんへのインタビューです!

ワークショップ見学

ワークショップの会場である中学校へ、アーツカウンシル東京の岡野さんと共に向かいます。岡野さんからPKTの説明を聞きながら歩いているとあっという間に学校に到着。《芸術家と子どもたち》の中西さんや学級の先生が出迎えてくださり、そのまま会場となる教室へ。

教室では田村さんをはじめ、大駱駝艦のアーティストの皆さんがワークショップの準備を進められていました。そうしたなかで、私たちが中学校という環境に懐かしさを感じていると、生徒さんが教室に入室して、ワークショップが始まる雰囲気が出てきました。

ワークショップに参加しているのは、特別支援学級のみなさん。1年生から3年生まで合わせて30名ほどの生徒さんが参加されていました

私たちがはじめにご挨拶をさせていただいた後、アーティストから今日の流れの説明があり、いよいよワークショップが始まりました。

ワークショップ前半は身体ほぐしも兼ねながら、これまで練習してきた振付を一通り確認します。今回で5日目(全10日間)のワークショップということで、生徒さんは振付をほとんど覚えていて、スムーズに練習が進んでいきます。練習のなかで生徒さんは、アーティストから身体の動かし方のポイントや振付のイメージの説明を受けて、それを生かしながら自分の踊りに繋げている姿が印象的でした。

後半は体育館に移動して、発表本番を想定して練習を行います。実際に入場するところから行う練習では、生徒さんの集中もより高まります。アーティストは生徒さんの動きを見て、その場で振付を変えたり柔軟な声かけをしながら、生徒さんと一緒に作品をつくり上げていく様子がうかがえました。

いよいよ今日の練習も大詰めを迎えます。座っていた椅子を運んで1人ずつ無造作に組み上げていくシーンや、先頭の人の動きを真似しながら輪になって踊るシーンなどでは、生徒さんの個性が光る場面もありました。まさに今、この瞬間に作品がつくられているのだと感じられ、私自身も何度もそこに混ざりたい、一緒に身体を動かしたいと惹きつけられるような感覚を覚えました。

参加者インタビュー

生徒さんへのインタビュー

今回ワークショップに参加してみての感想を教えてください。

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生徒さん

1年生の時にもダンス講師の人が来てくれましたが、その頃は全く踊れなかったので、正直言って楽しくないって思っていました。でも、2年間かけて、シャイだったのが、少し積極的になりました。こういう授業のおかげで、今はダンスが少し楽しいと思えるようになりました。

今回が5回目の授業ですが、できるようになったと思うことは増えましたか。

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生徒さん

体の動かし方、腰の使い方がうまくなったなと思います。狼になる腰の形のつくり方とかをアーティストの先生からアドバイスしてもらいました

クラスメイトや他の学年の人と一緒に踊ってみて、みんなで踊る楽しさなどを感じたりしますか。

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生徒さん

他の人の個性を感じるのも、ちょっとした面白さだと思いました。

先生へのインタビュー

プログラム全体を通しての感想を教えてください。

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先生

私自身がこの学校に来てから、たった2年なんですが、生徒たちがいろんなことをできるようになっているとすごく感じます。今の2年生の子たちが1年生の時から見てるんですけど、回数を重ねるたびに、こんなに成長できるんだと感じました。今回でいうと、以前はあんなに恥ずかしがっていた子が、堂々とやっていて、そうしたことに新しい感動があるというか、こうやって人はいろんなものを経験して成長していくんだなっていうのを、すごく身近に感じられる瞬間が多かったかなと思います。

成長を見れる場として、この時間が大きなものになっているんですかね。

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先生

生徒たちの成長を目の前で見れることっていうのが今一番幸せな時間かもしれないです。できなかったことをできるようになるまで教えて、生徒ができた時には自分にも達成感があるし、生徒と一緒にその達成感を感じられるっていうのが一番大きいかなって思います。

練習を見ていると生徒の皆さんが生き生きとされている姿が見えて感動しました。

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先生

人前に出るのが苦手な子たちがすごく多いんですけど、こういうダンスを通して新たな自分に出会えるっていうのがすごく彼らにとって大きいんじゃないかなと思います。

今後もこのプログラムは継続していきたいですか。

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先生

そうですね。座学をすることももちろん大事だと思うんですけど、生徒たちは身体を動かしながらいろんなものを取り入れた方が、身近に楽しいと感じられると思っているので、ぜひこういうプログラムを今後も続けていきたいなと思います。

アーティスト:田村一行さんへのインタビュー

ワークショップに初めて参加させていただきましたが、自由に一人一人の個性をそのまま生かしながらされているのを感じました。ワークショップ全体を作るにあたって意識されていることはありますか。

自由ってすごい不自由だと思うんですね。自由って素晴らしいことだと思うんですけど、じゃあ「自由にやってみよう」っていう指示だけで全てが済んでしまったら指導者は必要なくなりますし、そうやって全てを肯定していくことってある意味ずるいとも思います。表現の授業では、じゃあどうやったら自由になれるのかっていう、自由になる方法を探っていくことが重要なんだと思っています。

あとは自分がどういった表現をどんなふうに面白いと思っているかということをきちんと伝えて、何かに本気で取り組んでる人が、普段どういうことを考えているかっていうところを感じてもらえるように意識しています。

生徒さんへのインタビューで、最初は恥ずかしい気持ちがあったけど、回を重ねていくうちにだんだんと恥ずかしさが消えていくとおっしゃっていました。自由さというか、何をしたらいいかわからないから恥ずかしくなってしまう。逆にこういう風にしたらいいんだっていうのが掴めてくると、恥ずかしさは自然に消えてくるのかなと感じました。

まさにそうですよね。僕自身も振付がある方が自由になれるんです。振付やタイミングは当然ですが、どんな風景の中にいるのかとか、どんなイメージで何に動かされて何を踊っているのかということが明確に決まっていればいるほど自由になれるんです。逆に振りや演出がすごい曖昧で、「自由に良い踊りを踊ってください」みたいなことだけだと、とても不自由さを感じてしまいます。

回を重ねるごとに生徒さんの変化などは感じますか。

感じますね。最初は生徒さんも何をさせられるんだろうってドキドキしてると思うんですよ。でも僕らには踊りしかなくて、こういう踊りを命がけでやってるんだということを真剣に伝えていくと、だんだん言葉が届き出して、それぞれに面白いと思う部分を感じ始めてくれるんだと思います。

最初は、何ができて何ができないか、何が好きで何が嫌いか、何をしたらみんなにとって良いことなのかということがわかりませんから、その辺を探りながらですね。「とにかくやってみよう」って試してみると、言葉なんかなくても「ここまでみんなできるんだ」とわかることもありますし、そこを僕が心配して余計な説明をペラペラ喋り過ぎてしまうと、みんなの表現の可能性をかえって潰してしまうということもあるんです。

僕らのカンパニーでも、稽古場作りって共通言語作りみたいな部分があって。入ったばっかりの人って、その言葉が分からないから苦労するんだと思うんです。学校で作品を作る時もそれは例外ではなくて、みんなと一緒に時間を過ごせば過ごすほど、一つの言葉でも、その言葉では言い現わしきれていないところまで、「こういう感じだよね」って伝わることが多くなっていくんじゃないかと思います。そういうふうに、回を重ねることの良さっていうのはとても感じています。

生徒さんの方からこういう風にしたいという声があったりするんですか。

結構面白がって、色々なアイデアを出してくれます。作品の後半に、リーダーの人の動きを真似るっていうシーンを作ったのですが、その時リーダーをやりたい人がいるか聞いてみたら、普段はとても静かに取り組んでいたような生徒さんが「はい!」と手を上げてくれて、すごい嬉しそうにその子ならではの動きを作ってくれたということもありました。

こういう体験を学校の授業でやる機会は少ないと思うんですが、学校の教育として、余暇時間ではなくて、教育の一部として行うことの意義を感じられたりすることはありますか。

結局、僕らってずるい存在なんですよ。普段学校できっちり行っていることっていうのがあるじゃないですか。遅刻しないようにちゃんと学校に行って、きちんと挨拶をして、忘れ物をしない、勉強をする、テストでは良い点を取る、早く走るみたいな。そういうきっちりしたものがあるからこそ、僕らみたいな異物が入って初めて輝けると思うんです。きちんとしたものがあるからこそ、良い点取らなくてもいいんだよ、足が遅くてもいいんだよ、上手にやらなくてもいいんだよっていうことが言えて、普段とは少し違う価値観を見せることができるんだと思います。

僕らの踊りの中に、日常生活じゃ絶対にやらない行為こそ面白いんじゃないかっていう考えがあって、そういった無駄なものや、普段やらない仕草の中から自分自身の踊りを見つけ出すとか、そういった表現もあるんだっていうことも知ってもらえたら嬉しいです。

子どもたちにとって、おそらくまだ親と先生と親戚のおじさんおばさんくらいしか、まわりに大人っていないと思うんです。その限られた大人以外の大人が普段の価値観を壊して、表現も含め、今まで興味のなかったものに興味を持つようになるとか、同じものを今までと違う見方で見る面白さに気付くとか、そういう新しい扉を開くきっかけになれればいいですよね。踊りのテクニックよりも、物事って色々な見方があるし、いろんな価値観あって、いろんな人間がいるんだっていうことを伝えられればいいなと思っています。

こういった取り組みを始めようと思ったきっかけはありますか。

本格的に全国いろいろな場所で、いろいろな方々を対象にワークショップやアウトリーチをやり出したのは、地域創造という財団の、さまざまな地域の劇場にアーティストを派遣してアウトリーチやワークショップをしたり、レパートリー作品や市民参加型の公演を行なう「公共ホール現代ダンス活性化事業」という事業があるんですが、2011年にその事業の登録アーティストになってからは、学校での授業などの機会がとても多くなりました。

印象に残っているのは、最初の頃に行った愛知県の支援学校の校長先生の言葉ですね。校長先生が僕の授業前に生徒さんたちに「みんな、今日はバカになれ」って、アントニオ猪木さんの言葉を引用してお話されたんです。僕も先生を真似してその言葉を今でもいろんなところで使うんですけど、本当にいい言葉です。「こういう言葉で生徒さんと向き合うべきなんだ!」って教えていただいた感じでした。学校だからこうしなくちゃいけないっていう範囲狭めてのは自分だったんです。自分自身の価値観を破ってもらえたありがたい出来事でした。

活動している中で、生徒さんから刺激をもらうこともあるのでしょうか。

連発ですね。こういった活動で出会う方々は、本当に自分にとっての踊りの先生です。「踊りってこういうものだろう」という先入観のない素直な身体というのはとても魅力的で学ぶことが多いです。それこそ本当に自由なんですよね。想像もできない表現や動きが出てくることがたくさんあります。そういう先入観のない動き、作為的ではない踊りっていうのは、ある意味僕らが求めている身体でもあって、それは踊りだけに限ったことじゃなくて、表現全体に通ずることだと思うんですよ。「踊りの中に踊りはない」「表現の中に表現はない」と良く言うんですが、まさにそのことを実感しますし、刺激だらけです。

こちらの学校での残りの活動期間を通じて、生徒さんにこういうものを得てほしい、というものはありますか。

「得てほしいもの」ってこちらで決めなくていいと思っています。踊りでも「笑わそう」とか「感動させよう」みたいな狙いが見え透いている踊りって、なんかちょっと寒いなって感じることがあります。表現って、受け止める側がどう捉えるかっていうのはそれこそ自由ですよね。僕にとってこういう授業をすることと、舞台で踊ることは一緒なんです。僕という人間が踊りを通して何かを伝えていることに変わりはありませんし、一緒に作品を作るという時間が、そのまま田村一行という表現をしていることになっているんです。だから何かこちらの思いを押し付けるというようなことはなく、それぞれ何を感じるかは違っていていいと考えています。

とはいえ、何かを得てくれてると信じていますけどね。そのためには適当なことはできませんし、みんながすぐにできるような簡単なことだけをやっても面白くないと思います。何かに真剣に取り組んでいる人の姿を見て、そういった光景から何かを感じて、自分も真剣に取り組んでみる。そこから何かを少しでも得てもらえれば出会った意味があると思うんです。そしてそこで得たものは多分普遍的なもので、みんなの心の中に少しでも残ることができるものなんじゃないかと信じています。


ワークショップに参加された皆さんやアーティストのお話を伺っていると、一つの作品を作りながら互いに刺激を受け、共に成長しあえる仲間のように思っているように感じました。

後編ではそうした取り組みを続けていくことの重要性について、NPO法人芸術家と子どもたちの中西さんにお話を伺いました。

後編記事はこちらから↓↓

《前編》アートを通して人と人が出会う、混ざる、関係を超えて共創する。【パフォーマンスキッズ・トーキョー】

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